ポケモンで覚える日本語
大人になっても思うのですが、日本語の言い回し・慣用句ってのはなかなか難しいものがあります。
説明を受けて「なるほど、そういうことか!」と気づけるものはまだいいのですが『風が吹けば桶屋が儲かる』なんて子供に言っても、『桶屋? なにそれ?』と訊かれる確率100%です。
ただ、そういった昔の言葉を今は全く使わないか? と言われるとそうでもなかったりします。先日もニュースで出てきたのが『こけら落とし』でした。
「こけら落としってどういう意味?」
と子供に訊かれて、何かの施設がオープンした時のことだよなあ、まではわかっていたのですが『こけらってなんだ?』と慌ててWIKIPEDIAのお世話になりました。
※ 正確には天井のある施設が初使用されることを意味していて、こけらは木片のようですね。
さて、ポケモンの世界においても様々な日本語が登場します。
子供はもちろんそれを日常会話に取り入れて使っていたりするのですが、ポケモンから語彙を増やしていくこともあるんだなあ、という記事です。
日本語① ありじごく
任天堂スイッチを手にいれた小2息子ですが、
「公文の宿題である、国・英・数を1セット終わらせると90分やってよい。その後追加で宿題を終わらせられれば、1セットごとに60分ずつやってよい」
という我が家ルールで運用されています。
ところが「ポケモンソード」のゲーム上では一通りやることが終わってしまった彼には、以前ほどの熱意はありません。
「うーん、あとは図鑑埋めくらいだしなあ」と早々にスイッチでのプレイを諦め、制限のかかっていないポケモンGOを手にするパターンも増えてきました。
「宿題はね、スイッチの為にやるわけじゃないんだよ。自分の勉強の為なんだよ」
とママ(つまり妻)に叱責を受けて渋々デスクに向かう状況もよく見ます。そんな時に彼が呟いたのが
「うわ、宿題『ありじごく』だ」です。
ふと気になって「ありじごくって何か知ってる?」と訊くと「逃げられないこと」との返答がありましたので大意は知っているようです。また、これってポケモンの『特性』に存在する言葉のようですね。
「ありじごく」っていうものが、実在する虫の捕獲方法で、逃げられない穴に落ちた蟻が食べられちゃう罠のような仕掛けのこと、と説明すると
「ひどい、そんなひどい方法で食べちゃうなんてずるいし、ひどい」
と驚いておりました。
自分が幼少期であれば、まず本物の「蟻地獄」を見た上で「蟻地獄のようだ」って言葉を使いだしたと思うんですが、そう言えば本物の蟻地獄なんて、今や見る機会もありません。今は言葉が先なんだなあ、と不思議な感覚になりました。
日本語② げきりん
「パパ『げきりん』ってどういう意味なの? ポケモンGOだとすごい強いけど」と訊かれたことがあります。
「竜という生き物がいて、彼らは本来優しいんだけど『ここだけは触られるとダメだ』というポイントがあって、その部分を『げきりん』って言うんだよ」
と教えたことがあります。これは知識として僕も知っていました。
「すごい優しいのに、ここだけはダメだっていう場所?」
「そうそう、だから正確には『げきりんに触れる』って使い方をするから、げきりんそのものは技じゃないんだよ、ポケモンの世界では竜っぽいポケモンが怒ったときの技の名前だけどね」
こんなやりとりで納得してもらったことがあります。
この言葉は、実に恐ろしいシーンで使われることとなりました。
現在のコロナ騒ぎの中、子供は家の前の私道でなわとびをする日課があるのですが、お向かいさんのほぼ同年齢のお子さんも一緒にやるケースが多いです。
両家の母親とその子供、合計4人ほどで子供が縄跳びをする状況を想像してください。縄跳びの合間に子供たちが会話をしています。僕は窓からその光景を眺めています。
「なわとびってダイエットにもいいってママが言ってたよ、ママも本当はやりたいんだってさ」とお向かいさんのお子さん。
そのお母さんは、戸惑った顔をしています。そりゃそうだ。
「うちのママさ、体重●●キロなんだけどさ、ダイエットしたいのかなあ」と我が息子。
うわ、やっちまった、しかもリアルな数字だぞそれ。
と僕が驚くより先にママ(妻)が大声を出します
「ちょっと!!!」
本気で怒ったママに驚いた息子が
「うわー、ママのげきりんは体重だったあ」と逃げ出します。お向かいのお子さんも、鬼ごっこのつもりでしょうか、一緒になって走り出します。
困ったのはこちらです。この空気のまま自宅に戻ってくるとしたら、僕は彼らにどう接したら良いのでしょう。使い方は間違っていないような気がしますが、子供は恐ろしい…
日本語③ ばけのかわ
「『ばけのかわ』って鎧の名前?」と子供に訊かれたことあります。これもポケモンの特性から知った言葉のようですね。もちろん鎧の名前ではありません。
『ばけ』ってのは化けることで、普段の自分の姿を隠して何かになることを『化ける』と表現すること。つまり『何か都合の良いものに化けている状態の外側の皮』であること。
小2息子は「本当の姿を隠す外側」と理解したようです、これもまちがってはいませんね。ここで珍しくママが登場します。
「そうよ、本当はダメなのに隠している人がいるとして、その人の本性がバレちゃったときに使う言葉よ。『化けの皮が剥がれた』って使い方が多いわねえ」
「出来ないくせに出来るってふりをした人がばれちゃった時だね」と息子。なかなかの理解力です。
「そうよ。本当はすごくだらしないくせに、結婚するまでそれを隠したりしている人がいたりするの。息子ちゃんも気をつけて」
もちろん彼女の視線はまっすぐ僕に向けられています。ああ、まるで刃物のようだ。
「デートしてるときは、洋服もちゃんとしてたんだけどね。結婚すると同じのばっかり着てたり、パジャマみたいな恰好で外に行こうとしたりする人もいるのよ」
困った。これは困った。変な汗が出てきました。
「そうか、結婚して『ばけのかわ』が剥がれちゃう人もいるんだね」と息子。
「あなたのパパよ」妻はあっさり暴露します。
「パパは結婚して化けの皮がはがれちゃったのか!」となぜか大喜びの息子。これも子供たちの会話に登場したりするんだろうなあ、と僕はしばらく絶望しました。
ポケモンで覚える日本語
ひと昔前であれば語彙が増える要因は、お友達だったりテレビだったりが圧倒的だったのかと思います。時代は変わってYOUTUBEだったりゲームだったりから、子供たちはボキャブラリーを増やしているのかも知れません。
そしてそれが我が家の場合、ポケモンGOでした。
今回ご紹介させていただいたケース以外でも「なんとなくわかっているつもりの言葉」について、子供から意味を訊かれることも多くなってきました。
便利な時代になったもので、手元のスマホを少し触れば大体解決することも出来ます。子供からの質問をきっかけに、「なんとなく使っていた言葉」を理解するのも良いかも知れません。
また、ここまでお読みくださった方であれば、とっくにご理解いただいているものと思いますが、子供の発言には危険が伴います。
「なんとなく使っていた言葉」を説明した後は、適切な使用例を選択することをお勧めします。