レイドバトルの記憶と子供の成長
いったい何歳くらいからの記憶があるのが普通なのでしょう。
小2になった息子に「〇〇行ったの覚えてる?」と訊いても、実際覚えていないようです。まあ、自分のケースで考えてもそうですよね。幼稚園の断片的な記憶は、ほとんど曖昧です。
ところがですね、今朝ふいにこんなことを言われました。
「ねえ、パパ、僕〇〇駅のところのレイドでサンダー捕まえられなくて、すごい大泣きしたことなかった?」
少し驚きました。実際にあった出来事なんですが、彼が幼稚園生だったころの話です。そんな事覚えてるのか!
今回は子供の記憶と成長のお話です。
当時の息子のポケ活
今は自分用スマホを手に入れ、すっかりデジタルネイティブな生活を送っている息子ですが、ここまで整ってきたのは最近の話です。
よくあるパターンだと思うのですが、当時の彼はパパのスマホを我が物顔で使っているような状況でした。つまりポケモンのアカウントもパパと共用(正確にはパパのアカウントを自由に使用)でした。
と微笑ましく見ていると、湯水のようにハイパーボールを検討違いのところに投げまくりです。当時はボールが枯渇するのも日常茶飯事でした。多分ご覧いただいている父兄の皆様も似たようなご経験があったりするのではないでしょうか。
そんな感じで当時の彼は、『初期ポケ活ライフ』を送っていたわけです。
伝説の三鳥
カントー大好きおじさんにとっては特別に思い入れの深いポケモンたちです。
なんと、それに関するイベントが告知されました。土曜日か日曜日のどちらかだったと記憶しております。時間限定で三鳥が登場するイベントが開催されるのです。
「もっとも人が集まりそうな駅周辺にいて、5玉の出現に沿って移動していくぞ」とか「うーん、無理してそこまで自転車で行ったほうが効率あがるかなあ」とか、そんな妄想をしながらその日を迎えました。
しかしですね、何事も計画はあくまで計画、予定は未定です。予想しなかった2つのイレギュラー事案が発生することとなりました。
予定外の出来事
・雨天だった
ひとつ目は仕方がないことなんですが、天候です。これによる影響は実は結構あってですね、『人手が減る』のを危惧しました。
目的の駅周辺は有名なスポットなんで、大丈夫だろうとは思っていたのですが、やはり大人数の方が効率が良さそうです。
・妻が体調を崩してしまった
これも仕方がないことですし、何より子供が小さいご家庭だと死活問題になったりするのですが、妻の体調が少しすぐれなかったのです。
「ねえ、なんだかわからないけど楽しみにしてたんでしょ、子供はこっちで見るから心配しないで」との彼女の言葉。「お、サンキュー」なんて答えるほど能天気ではありません。
「大丈夫、息子もポケモンやってるからちょうどいいよ、連れていくから休んでて」一家の主たるものの模範解答です。そしてはい、本日のポケ活は幼稚園児同行が確定です。
こんな感じでですね、お気楽にポケモンを捕まえるはずだった休日は
「雨の中、幼稚園児と共に繁華街の駅周辺で伝説の三鳥を捕まえる」
高難易度なイベントへと変化したのです。
ポケ活の様子
カーブボールすら投げられず、ストレート一本しか持ち球のなかったような幼稚園児です。しかもそのストレートも安定しません。
「なんとかごまかして僕がカーブボール投げるしかないな」
と思っていたのですが、残念ながらごまかしが効かない程度には成長しておりました。
そうです、ほとんどの捕獲タイミングで彼は僕のスマホを奪い取りました。というよりも、ジム周辺では僕が自分のスマホを持つ機会はほぼありませんでした。その変わり、彼の頭上に傘をかかげる役職を拝命しました。
楽しそうに画面を叩き、ぐんぐん減る相手のHPに嬉しそうです。心配された雨天でしたが、やはり有名駅ということもあって、常に20人のトレーナーが集まるような状況です。伝説の三鳥と言えど跡形もありません。
うん、こんなに楽しそうなら、傘ホルダーの役割でもいいかな、なんて思ったりもしたのですが、問題は捕獲です。
どちらかと言うと、見守る父親の方が必死で祈ります。「頼む捕まってくれ。息子はストレートしかなげられないし、グレートすら10%くらいの確率なんだ!」「感情をむき出しにするタイプなんだ、捕まってくれ! 泣かれるめんどくさいんだ!」
しかし確率は無情です。捕獲率で言えば40%くらいでしょうか。逃げられる度にベソをかき、捕獲すると大喜びの息子を連れて、僕は街を徘徊しました。
最後の1戦
時間限定イベントだということもあり、最後の1戦を迎えることになりました。直前のレイドバトルで「色違い」のファイヤーをすんなり捕獲した息子は、「次も捕まえるぞ」と根拠のない自身に満ちた顔をしています。
「頼む、強くなくていいから捕まってくれ」と祈る父親(僕)は更に必死です。
最後の敵はこちら、サンダーでした。
傘を彼の上に掲げながら、僕は祈りを捧げます。総勢20名のトレーナたちから攻撃を受けたサンダーは倒れます。
1球また1球と、ボールが消費され雲行きが怪しくなってきました。息子は段々と泣き顔です。
最後の1球となりました。
息子が渾身の力で投げたボールは、サンダーの威嚇にはばまれ、その向こうへと姿を消します。悲鳴に近い声をあげて泣き出す彼に、周囲の方々も怪訝な顔をしています。むしろ叫びたいのは僕のほうでした。
その後どうやって自宅まで帰宅したのかは、あまり記憶にありません。
へそを曲げて泣きじゃくる息子をどうしたんでしょうね。思い出したくない記憶は封印されるっていいますから、きっと思い出したくない記憶だったのでしょうか。
息子の成長
そして冒頭の子供の言葉につながるのです。
「やっぱりそんなこと、あったよね、何か急に思い出したんだよ」と息子の言葉
「サンダーに逃げられてね、すっごい悲しくてね、僕泣いてたんだけどパパが抱っこしておうちまで連れってってくれたの覚えてる」
僕は驚きます。どうやら僕は泣きじゃくる息子を抱っこして、自宅まで辿りついたというのです。年長の息子なんて、けっこうな重さのはずです。そりゃ封印したい記憶だわ、と思いました。
「たださあ、今考えるとあれってパパのポケモンだから、そんな泣くことなかったよねえ、僕のじゃないんだし」
「え?」
「しかもCPチェックしたわけじゃないから、高個体値かどうかもわからないよね、あんなに泣くことなかったなあ」
何も言えませんでした。
今朝、この話をしてですね、そんな昔のこと思い出したり、なんだか成長したんだなあと思ったり色々複雑でした。当時も今も、思い出のものさしはポケモンGOです。
すっかり大きくなった息子を眺めながら、感慨深くコーヒーを飲みました。